学級通信に載せる内容は決まっているのに、書き出しがうまくまとまらない。保護者にお願いしたいことはあるけれど、きつい言い方にはしたくない。そんなとき、生成AIに文案を考えてもらいたくなりませんか?
ただ、過去の学級通信を読み込ませてよいのか、子どもの様子をどこまで入力してよいのかは迷うところです。
最初は、学級通信を丸ごと任せず、「行事のお知らせ」のような短い文章で試してみてはどうでしょうか? 文章の組み立てをAIに手伝ってもらい、日時や持ち物は自分で入れる方法です。
文部科学省のガイドラインも、学年・学級だよりなどのたたき台づくりを教職員の利用例に挙げています。ただし、できた文章を確かめ、手直しして完成させるのは教員です。〔文科省ガイドライン〕
ここからは、その考え方を踏まえた使い方の例を紹介します。文科省が定めた手順ではありません。まずは、勤務先で利用が認められていることを確認してください。
使う前に、学校でのルールを確認しておこう
普段使っているAIでも、私用のアカウントをそのまま校務に使ってよいわけではありません。文科省のガイドラインは、私用アカウントや、管理者の許可を得ていない私用端末での利用を認めていません。〔文科省ガイドライン〕
学校での使い方が分からなければ、情報担当の先生や管理職に、次のように確認してみてください。
「学級通信や保護者向けの案内文に生成AIを使いたいのですが、使ってよいサービスとアカウントはありますか? 入力してよい情報の範囲も教えてください」
学校のルールに加え、サービスの最新の利用規約や、生成した文章を使う際の条件も確認が必要です。〔文科省ガイドライン〕 利用できる環境が決まったら、実際に何を頼むか考えていきましょう。
まずは、子どもの情報を使わずに頼んでみる
行事の案内文なら、児童の名前や成績、家庭の事情を伝えなくても頼めます。「保護者向けに」「短く」「お願いが強すぎる表現にならないように」と、文章の条件を伝えてみてください。
たとえば、行事のお知らせなら、次のような依頼が考えられます。
小学校の保護者に配る、行事のお知らせの文案を考えてください。
短いあいさつの後に、日時・場所・持ち物・提出期限・連絡先が分かるようにまとめてください。お願いは丁寧に、ただし回りくどくならないように書いてください。
行事名などの具体的な情報は後で入れます。[行事名][日時][場所][持ち物][提出期限][連絡先]の欄を設けてください。
子どもの様子や学校のルールは、想像で書き足さないでください。ほかに必要な情報があれば、文案の後に確認事項として挙げてください。
※記事用に作成した依頼例です。特定のサービスで出力を確かめたものではありません。
日時や持ち物まで空欄にするのは、最初に渡す情報を少なくするためです。一般的な行事情報の入力が、一律に禁止されているという意味ではありません。どこまで入力できるかは、学校のルールに従ってください。
出てきた文案が堅ければ、「あいさつを短く」「お願いの部分をもう少しやわらかく」と、気になるところを伝え直せます。文章全体を採用せず、書き出しだけを参考にする使い方でもかまいません。
過去の学級通信を使いたいときは
文体を似せたいからと、過去の学級通信をそのまま添付するのは避けましょう。この使い方では、原本を渡す代わりに「短い段落に分ける」「専門用語を使わない」など、まねしたい特徴を言葉で伝える方法を勧めます。
名前を消しただけでも、出来事や家庭の状況から誰のことか分かるかもしれません。子どものエピソードを載せたい場合は、AIに渡さず、自分で書き加えるほうが扱う情報を絞れます。
文科省のガイドラインでは、個別契約などに基づく適切なセキュリティ対策を講じた環境で運用する場合を除き、重要性の高い成績情報等の入力を禁じています。個人情報を入力する場合には、提供者がその情報をAIの学習に使うかどうかなども、十分に確認する必要があります。〔文科省ガイドライン〕
「学習に使わない設定にしたから大丈夫」と自己判断せず、学校・教育委員会のルールや管理者の指示を確認してください。〔文科省ガイドライン〕
読みやすくても、そのまま配らない
文案を受け取ったら、言い回しだけでなく、書き足された内容にも目を向けてください。
たとえば、「子どもたちも楽しみにしています」という一文。学級通信にあっても違和感のない表現ですが、実際にそうだったかは、AIには伝えていません。「雨天時も予定どおり実施します」とあれば、行事の実施条件にまで踏み込んでいます。
この2文は説明のために作った例ですが、文案を読むときは、こうした「伝えていないこと」が紛れ込んでいないか確かめましょう。自然な日本語になっていることと、内容が正しいことは別です。教員による確認と手直しは、ガイドラインでも求められています。〔文科省ガイドライン〕
使いたい文章が決まったら、学校で認められた文書編集ソフトに移し、実施要項などを見ながら日時や持ち物を入れます。その後は、次の項目を確かめてください。
- □ 日時・場所・持ち物・提出期限・連絡先は正しく、空欄も残っていない
- □ 学校が決めていないお願いやルール、確認していない子どもの様子が加わっていない
- □ 児童や家庭の情報を、必要以上に載せていない
- □ 保護者が読んで、何をいつまでにすればよいか分かる
- □ 校内で必要な確認・決裁を済ませている
仕上げた文書を、もう一度AIに渡して推敲してもらう場合は注意が必要です。最初の依頼にはなかった実際の情報も送ることになります。文書編集ソフトに付いたAI機能や外部連携を使う場合も、送ってよい情報の範囲を確認してください。ここでは、情報を入れた後の仕上げは自分で行う方法を勧めます。
イラストや引用も「学校の配布物だから自由」ではない
文章と一緒にイラストを作るなら、既存のキャラクターに似せる指示は避けましょう。気になる表現や画像は検索などで確かめ、使ってよいか判断できないものは載せないようにしてください。〔文科省ガイドライン〕
文科省は、保護者向けの学級通信など、授業目的の範囲を超える利用には、著作権法第35条が適用されないと説明しています。学校の配布物だからといって、他人の作品を自由に使えるわけではありません。〔文科省ガイドライン〕
既存の作品と創作的な表現が共通し、その作品を基に作った生成物を使う場合は、ほかの例外規定が適用される場合などを除き、原則として権利者の許諾が必要です。〔文科省ガイドライン〕
書きにくい部分だけ、手伝ってもらう
最初から学級通信一枚を完成させようとせず、「行事の案内を短くまとめたい」「このお願いをやわらかく伝えたい」と、困っている部分を絞ってみてください。
文案を読んで違和感があれば、普段の自分の言葉に戻してかまいません。AIの文章に合わせるより、保護者に伝えたいことが伝わるかを確かめながら使ってみましょう。
参考資料
- 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(2024年12月26日公表)